アイ・ラブ・おデブ【完結】
その時、隅に置かれた段ボールの上の携帯が鳴った

ゆっくりとした動作で遥が電話を手にする

「…はい…はい…
…そうですか
…はい…分かりました
…ありがとうございます
じゃあ今から行きます
…失礼します」

電話を切り、小夜の傍にあるダウンジャケットを手にしながら話始めた

「僕の気持ちも何も…環と共に生きていく…それが答えだ
悪いが用事がある
出掛ける…
帰ってもらえるかな?」

「…えっ?
ま…待っています…
ここで帰ってくるのを待ってる!」

急かすような他人行儀な口調の遥に押され、思考回路が上手く働いていないが辛うじてそう答えた

「…勝手にどうぞ…」

一度も視線が絡むことなく玄関の扉は閉じられた

…ハル…どうしてあんなに辛そうな顔をして…

携帯を手にする直前に見えた遥の横顔は眉間に深い皺を寄せ、一文字に口を結んでいた

まだここに来た目的を果たしていない
遥の帰りを待ってもう一度話をしたい
たとえその瞳に映ることがなくとも…

けれど小夜の願いが叶えられることなく一晩が過ぎていく

遥の部屋で主の帰りを待ったが、玄関の扉が開かれることはなかった
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