アイ・ラブ・おデブ【完結】
緑に囲まれたその建物は病院というよりは、保養施設と呼ばれるような静かで綺麗な場所だった

近くで花壇の手入れをしている人に慎太郎は話しかけ、受付を教えてもらった

中に入り案内をされたのは日本なら談話室とでも呼ばれるであろう、陽射しの降り注ぐ明るい部屋だった

ソファや椅子、テーブルがあちらこちらに置かれ、リゾートホテルのロビーのようだ

「こちらに来てくださるそうです」

少し緊張した様子の慎太郎が、先程対応してくれた職員の言葉を教えてくれた

…どんな人なのだろう?
ハルが付き合っていた元彼女に会うなんて…思ってもいなかった
話はできるのだろうか?

複雑な思いを抱え、窓際の暖かなソファに座った

窓の外には冬の優しい太陽の元に、葉を落とさぬ広葉樹が佇んでいた

どれくらいの時間が経ったのだろうか
太陽は右に動き、丁度正面に廻って来ている

人の気配に視線を巡らすと、その部屋の入り口に小柄な細い少女が俯いて立っている

そう…少女と思えるような繊細さと儚さを合わせ持った女性だった

小夜は静かに近づき、モジモジとハンカチを握る手にそっと触れた
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