アイ・ラブ・おデブ【完結】
元日…今頃日本にいたならお笑い番組を見ながら炬燵でゴロゴロしていたに違いない

けれども、小夜は座り慣れてしまったバス停のベンチにいた

慎太郎が車で一緒に待つと言ってくれたが、それを断り一人にしてもらった

もし、遥と会えずに日本に帰る時のために…会えても話ができなかった時のために手紙を書きながら

今日は入り口に横付けされる車は少ないなと考えていた時、見覚えのあるシルバーの高級車が停まった

ドキドキと心臓が早鐘のように鳴り、小夜の足をそこに向かわせる

道路を渡り終える前に運転手が後部座席のドアを開ける準備を終えて、建物から出てくる人物を見ていた

…あっ!環さん…

マネージャーと思われる人と二人、環が濃い色のサングラスをかけて優雅に出てきた

…どうしよう…

足が竦み次の一歩が出ずに道路の端に立ち止まってしまった

そうしている間に車寄せに停まっていた車は向こうの出口から走り去っていった

ふ~っ…
知らぬ間に息を止めていたらしい
大きく息を吐くと強張っていた体から力が抜けていく

思わずその場に座り込みそうになるが、入り口付近にいる警備員がこちらを睨んでいる気がした

携帯を見る振りをしながら元の場所へと戻った
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