アイ・ラブ・おデブ【完結】
「何よ!母のことって?
あなたが何か知っているとでも言うの?」

狭い機内に興奮した環の声が響いた

けれど、それまでおどおどとしていたジョエルは立ち上がり真っ直ぐに見つめた

「あなたはこれまで何をしてきたんですか!
母親のために…トップになるための険しい道を歩んできたのではありませんか?
ご両親に喜んでもらうために!
僕の口からはもうこれ以上話さない
日本で…自分の目で確かめなさい」

環の隣に座る、脱け殻のような遥を憐れんだ目で見た

「笹原さんのこともよく考えた方がいい…
自分以外の人間にも感情や未来があることを…」

日本へ向かう小さなジェット機の中に遥もいた
環が一緒に来るように強く希望したからである

父親の病状が落ち着けば、パリに帰ることなくニューヨークへ向かう計画に変更していた

ジョエルの言葉に反論しようと思ったが、両親のことを持ち出されては何も言えなかった

両親に何が起こっているのか…もやもやした感情を抱え、静かに目を閉じ、祖国に着陸するのを待った
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