アイ・ラブ・おデブ【完結】
父親が入院していると案内されたのは小さな病院だった

遥は荷物と共にホテルへと向かい、隣にいるのは冴えない男…ジョエルだ

危篤と連絡を受けたが、あの頑丈な父親がベッドに弱々しく寝ている姿など想像ができない

信じたくなくないが、否定できるような情報も生憎持ち合わせていなかった

ジョエルは受付や病院の職員に尋ねることなくエレベーターへと乗り込んだ

自分と結婚をしてから日本語を猛勉強していたことは知っているが、ここの案内図まで一瞬で理解する程に堪能とは思えない

日本人の自分でさえ、立ち止まらなければ迷路のような建物の中を進むことなど出来そうにない

いくつかの疑問が残るが今は、高鳴る鼓動を鎮めることに集中した

今まで、どんなステージや場面でこんなにも緊張を感じなかった

エレベーターの上昇に合わせて深く息を吸った

旧式のこの小さな箱は、モーター音を唸らせゆっくりと数字の光る3階に止まった
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