アイ・ラブ・おデブ【完結】
パリでの生活では殆ど私物は増えていない

数枚の下着に数着のカジュアルな服、安物のジャケットが小さなスーツケースに押し込まれているだけだ

ブランドものの服も勝手にクローゼットに用意されたが、着る気にもならず入れてこなかった

かなり着古した着替えを取り出すと、その下に見覚えのない封書が見えた

…これは?

少し皺になっているそれは、表も裏も何も書かれていない

…環はこんな物を入れる事は出来なかった
じゃあ…あのメイドが…
環に頼まれたのか?

そう思うと、この白い封筒が忌々しい物に見えてくる

ギュウと握り潰し、屑籠に放り投げた

コトッ…

屑籠の中で小さな音を立てたそれは、何故か遥の心に引っ掛かった

…どうせ、環の新しい命令か何かが書かれているに違いない
読んだって…気分が悪くなるだけだろう

そう思いながらも気になり、気が付けば拾い上げて、もう一度手にしていた

握り潰した紙を丁寧に拡げ、糊付けされた封を開いた
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