アイ・ラブ・おデブ【完結】
今、耳にした言葉も、目の前の見たこともない姿の環も、理解出来ずに遥は凝視していた

膝に置いた手を弄びながら視線を落とし、小さな声で話す環など想像すらしたことがない

いつも自信に満ち溢れ、どこにいても華やかな女優でいた…そう例え、家のリビングにいても満員の観客がいるステージ上のようなオーラを湛えていた

再び長い沈黙の後、隣家との間に見える小さな空を見上げて重い口を開いた

「…信じて…もらえないかも…知れないけど…
もう、女優も…何もかも…辞めるわ
…私が手に入れようとしていた物は…あなたを含めて全て…
間違いだった…
…本当にごめんなさい…
遥の全てを…奪っておきながら…
今さら…都合が良すぎるわね」

…女優を辞める?
間違いだった?
環が言ったのか?
信じられない…これも何かの罠なのか?
また何か、仕掛けようと演技をしているんじゃないか?

今までのことを考えれば、その言葉を額面通りに受け入れることはできない

遥は言葉の裏にある、環の真意を図りかねて相槌さえも出来ずにいた
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