アイ・ラブ・おデブ【完結】
駅に向かう道すがら、仏壇に手を合わせるのを忘れたな…と思ったが、今さら引き返す訳にもいかず、心の中で手を合わせた

…さて、これで自由の身になったのか…
自由…何もかもを失ったけどな
だが、環からさあやを守ることは出来た
そうだ…僕の願いは叶えられたんだ
さあやの願い…マサやトニーに謝らなければ…

小夜の手紙に書かれていた願いを叶えるためにその日、友人たちの声を聞いた

電話の向こうでトニーは泣きながら、マサは怒鳴るような激しい口調で、顔を見せに来るように告げた

その後は、自転車での旅を続けて九州の果てまでやって来たのだ

この後は春を迎えた北の地を回り、本州も縦断してみることにした

いつ帰るのか…どこへ帰るのかなんて決めてない

…もう自分のいる場所などどこにも…
そう…僕が帰りたい場所は…さあやが隣で笑っている場所…
そんな希望まで失ってしまった
大切にしていたアレまでもどこかにいってしまった

今日、フェリーの待合室でマサに殴られたのには驚いた

まさか、こんな東京から離れた場所で見つかるなんて想像もしていない

…さあやのことは教えてもらえなかった
当然といえば当然だな
何か困ったことにでもなっているのか?
だが…もう助けることは出来ない…

自分の招いた結果に肩を落とし、デッキから見える暗い海原を見つめた
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