アイ・ラブ・おデブ【完結】
自分のデスクにいても、周りの視線が気になる

やっと昼休みになり、一息吐けるとかと思えばそんな筈はなかった

食堂に向かう道すがらでも、振り返られたり、こそこそと話をされたりと居心地の悪さは加速していく

…もう、昼食は諦めてトイレにでも籠る?
駄目だ…きっとトイレの中でもあたしの話が聞こえてきそうだ…

俯いたまま廊下を歩いていると急に背中をバンと叩かれた

「ほら!昼飯に行くぞ!」

軽く前へつんのめりながら、横を見るとにやけている柏木がエレベーターを顎で示す

昼食を抜くことも考えたが、朝から自転車でカロリーを消費した体が許してくれなかった

大人しく後を付いて行き、会社から離れた少し高めのカフェに来た

「お前…有名人になったな
サインでももらっておくか…」

注文を終えるとそんな嫌みを口にした

「…そうなんだよね
柏木は…テレビか何かで見たの?」

「ん?見てないのか?
随分とのんきだな」

ポケットからスマホを取り出し、ネットの動画ニュースを画面に写した

見出しには"×○賞を受賞した甲斐 慎太郎氏渾身の新作を語る"と書かれ、小夜とぴったりとくっついたまま話をしている
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