アイ・ラブ・おデブ【完結】
だが、小夜の方を一度も見ることなく、黙ったままグラスを空けている

「稲本さん…」

その丸めた背中に、少し悲しい気持ちになってきたとき、リームが助け舟を出してくれた

「小夜ちゃん…稲本さんね、本当はもの凄く嬉しいのよ!

慎太郎さんの計画だって、色々口出ししたり…
上手くいくように幾つもの神社へお参りに行ったり…
そうそう!二人が元に戻れるように、大好きなお酒を絶ったりしてたのよ…願掛けして…

だけど、実際に仲のいい二人を目の当たりにすると…
妬けちゃうんじゃないかしら?
可愛い娘を嫁にだす花嫁の父の心境ってヤツよ!
分かってあげてね!」

…稲本さん…

「はいっ…分かりました
でも、稲本さん!お酒…飲み過ぎないでくださいね
あたし…お父さんみたいに慕う稲本さんの体が心配です」

再び溢れだした涙を拭いながら、そう告げた

何も言わない稲本は小夜に背を向け、目頭を押さえた

そんなやり取りを離れた場所から遥が、そっと見守っていた
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