まだ、恋には届かない。
野田も町田も、ぬるいお湯を嫌う。
茶もコーヒーも、舌が痺れそうなほど熱いものに限るというのが２人の持論だ。
なので、２人の飲み物を用意するときは、ポットの湯をやかんに入れてガスにかけて、これでもかというまで沸かし直さなければならない。
面倒くさい男たちだと思う反面、この時間を利用して、軽く屈伸運動したり、ストレッチをしてりしていられるので、亜紀にはいい気分転換になっていた。
亜紀は肩を大きく回して首を左右に曲げた。
とたん、ポキポキと音がした。
整体行きたいなあと、亜紀はぽつりと呟いた。


町田さん。
何か言いたげだったなあ。
朝のアレって。
多分、言いたいことあってウズウズしてたんだろうなあ。
あー。
アレかな。
そろそろ毎年恒例の試験受けろ攻撃が始まる時期か。
うるさくなるなあ。
このときは野田さんも一緒になってくるからなあ。
しばらく辛抱しなきゃだわね。
根比べだわね。


やかんが、けたたましい音をたて、亜紀の思考を寸断した。
火を止めて、ひとつ大きく伸びをして、亜紀は１人分の緑茶と２人分のコーヒーを淹れた。
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