まだ、恋には届かない。
全部を集めるとパン屋の店内になったり、ケーキ屋になったりするそれの最新シリーズは、全て集めると遊園地になるようだった。
野田などは、時々、土産だと言って、昼ご飯を食べに外に出た帰りに寄ったコンビニで、それを買ってきたりすることがあった。

手渡されたそれに、子どものような顔で喜ぶ亜紀を見て、ホントにガキだな、お前はと、町田はいつも呆れ笑いを浮かべていた。

「アレ、色の組み合わせとか、いろいろ参考になるんですっ 煮詰まったときとか、見てるといろいろ浮かんでくるんですからねっ」
「ダメとは言ってねえだろ。片付けろなんて言ったことあるかよ、俺」

町田にそう言われ、亜紀は唇とタコのように突き出した。

「ないです。ごめんなさい」
「判ればいい。お前、上で寝てるのか?」

町田がロフトに上がるための階段を見て、不安そうな顔をした。

「そうなんですよね。まあ、足が治るまでは、来客用の布団が一組、廊下の収納棚に入ってるんで下で休みます」
「そうしろ。その足なんだからさ」
「どちらかって言うと、お風呂のほうが面倒ですよ。濡らさないようにしなきゃならないし」

亜紀のその一言で、町田が一瞬固まったように、亜紀には見えた。

「どうしたんですか?」

一瞬、様子の変わった町田を、亜紀は不思議そうに眺めていた。町田はなんでもねえよと、肩を竦めた。

「彼氏にでも来てもらえよ」
「いないの知ってて。ホントにいじわるですねっ」

ふん、と。
鼻を鳴らす亜紀に、町田は逆にギョっとした顔になった。
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