永遠を繋いで
昼休み、天気がいいからと嬉しそうに真美に手を引かれ屋上へ足を運んでいた。
蓮と涼太も居るのは言わずもがな、珍しく茜くんもお昼のチャイムが鳴ると同時にあたし達の元へやってきていた。

誰もいないのをいいことに、涼太が蓮の昼食の入った袋を奪おうと追いかけ回っていた。茜くんが苦笑しながらあたしの隣に腰を下ろす。

「友達と食べなくてよかったの?」

「…最近、仲良かった奴に彼女出来たらしくて」

ほら、と指差したのは裏庭の方。
この学校の裏庭は、大抵カップルに占領されているわけなのだが、今日はこの陽気のせいかいちだんと人口密度が高く感じる。その隅の方に、初々しくはにかむカップルが一組。
二人の手には、やはり赤い糸。

「…幸せそうだね」

「まぁ。結構前から好きだったらしいっすよ」

「そう、」

ぼんやりその二人を眺めていると、茜くんが小さく呟いた。

「俺も欲しいって、最近思います」

「赤い糸?」

「そっすよ」

「意外だなぁ。茜くんも憧れるんだ」

「憧れっていうか。だってあれが見えたら離れないらしいじゃないですか。まぁあってもなくても離してやりませんけどね」

そう言って笑った。
なんだかその言葉が茜くんらしくて、あたしもつられて笑う。
じゃあ、そう思えるくらい好きな子がいるんだ、と訊けば、切れ長の目が大きく見開いた。

「…前途多難ってやつみたいっすけどね」

そう苦笑する茜くんの真意は、あたしにはまだ分からない。

ただ、その子と結ばれることになれば、こうして隣で笑顔を見ることもなくなってしまうのだろうか、と頭の隅にふと過ぎった。

そんな思考を巡らせたのも一瞬。
昼食の攻防戦が終わったらしい涼太が、あたしと茜くんの間に走り込んできた。くっつくな、と言いながら、怪訝な顔をした茜くんと何やら口論を始めだす。
その後からフェンスに寄りかかるようにしゃがみこんだ蓮は攻防戦に負けたのだろう、真美にパンを半分貰いながらうなだれていた。
おつかれ、と声をかければ疲れたように笑ってみせた。何か分けてやろうと、鞄を漁り余っていた購買の袋をそのまま差し出した。


蓮、と彼を呼んで続けようとした言葉は、音になる前に消えてなくなった。それに気付いた蓮と真美も、ぴたりと動きが止まる。

二人の手には、薄い、赤い糸が繋がった。

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