永遠を繋いで
あれから何とも言い難い空気の中、あたし達は二人を残しその場を退散した。
涼太が見ててもどかしかったから丁度いいだろう、と言った言葉には大きく頷ける。どちらの口からも聞いたことはなかったが、二人が想い合っていたのは一目瞭然だ。男嫌いの真美と、女嫌いな蓮が一番最初に心を許せた異性がお互いなのだから、きっとうまくやれるはずだ。

友人の幸せは、何が理由でも喜ばしいものである。午後の授業はまるっきり出席しなかった二人に内心そわそわしながらいたものの、放課後に戻ってきた二人は少し照れくさそうにはにかみながら、付き合うことになったんだ、と確かにそう言った。
涼太に茶化されながらも、嬉しそうに笑う蓮にあたしも笑顔がこぼれた。抱きついてきた真美に良かったね、と言えばありがとう、と素直に笑う顔が同性のあたしでもどきりとするくらい綺麗だった。
その後すぐに教室を出て行った二人の背中を見送りながら、隣から俺達取り残されてくなあと呟いた涼太に吹き出してしまった。

「早く一人に落ち着きなさい」

「馬鹿、そしたらお前が一人になるだろー?」

「…大丈夫だよ」

「お前一人になんてできるわけねぇよ。…って俺かっこよくね、惚れた?」

「今の一言で台無しだわ」

可愛くねぇなぁ、とあたしの頭をぐしゃぐしゃに掻き回す。ぼさぼさになった髪を結い直しながら睨んでやると、いつもの無邪気な顔で笑っていた。

分かっているんだ、さっきの言葉が嘘ではないことくらい。
だって、涼太は優しいから。真美や蓮があたしを可愛がるように、あたしのことを大事に思ってくれていることだって、自惚れかもしれないが自覚はある。
あたしは涼太が好きだ。多分、これからもずっと。
失いたくない人だと思っている。でもそれは親友として、だ。

「俺は、お前のことすげぇ好きなのになぁ」

今度は優しく、ごつごつした大きな手があたしの頭を撫でた。見上げれば優しげに細められた目に捕らえられる。普段馬鹿ばかりしているくせに、不意にこんなに優しい顔をする時があって、内心戸惑う。単純なくせに、よく分からない。

本当にたまに、涼太はあたしを好きだと言う時がある。
他の色んな女の子には、しょっちゅう可愛いだとか好きだとか言う姿を知っているから、その言葉の真意は分からない。
本当だとしても、その『好き』はあたしの、涼太への好きと同じだろう。

「…友達に好きは、一々言わないものだよ」

やっぱり可愛くねぇ、なんて笑った涼太の顔は、いつもあたし達に向ける無邪気なそれで、ほっとした。


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