永遠を繋いで
「茜くんと付き合ってるの?」
真美のくりくりとした大きな目があたしを見つめた。
何の前触れもなくいきなり言うものだから、間の抜けた声が出てしまう。
「付き合ってないよ」
「朝から早速噂になってるよ、手繋いで歩いてたこととか」
「茜くんモテるだろうから、あたし嫌がらせされるかも」
「そしたらあたしが全力で守るからね!」
ぎゅっと音がしそうなほど抱きつかれて、少し苦しい。この細い体のどこにそんな力があるのだろう。
よろめきながら真美を受け止めていると、後ろの方からあたしを呼ぶ低い声がした。振り返ると、声に聞き覚えもなければ見覚えもない男の子が二人。敬語で話しているということは後輩だろうか。
なかなか用件を言わない二人に真美が苛々したように何か用、と冷たく言い放った。彼氏が出来たとはいえ、男嫌いは健在のようだ。その言葉にびくりと肩を震わせた一人に苦笑していると、慌てたようにあたしに向き直った。
「矢田と付き合ってるって本当ですか?」
「あぁ…付き合ってないよ」
すぐにピンとこない名前を必死に頭の中で考える。そういえば最初の方は茜くんのことを、矢田くんと呼んでいたのを思い出した。
あたしがそう答えると、男の子がほっと息を吐いた。何か言いたそうに口を開くも、それは背中に走った衝撃によって阻止されたようだ。情けない声をあげて廊下に倒れた後輩に大丈夫かと問えば、力なく笑っていた。背後からいきなり飛び蹴りが直撃したのだから無理もない。蹴りをいれた張本人は、何やらふてくされたような表情で立っていた。
「はい、用済んだら帰れ」
「ひどいっすよ!いきなり蹴らないでくださいよ涼太先輩!俺まだ黒瀬先輩にアドレス聞いてないですって」
「うっせ。家の真咲に手を出したら許しません」
お父さんか、と心の中で突っ込むと、今度はあたしの方に向き直った。表情は依然として、ふてくされたような、拗ねた子供のようだ。
「お前の後輩人気意味わかんね!フリーになった途端モテてんじゃねぇよ!」
あまりに理不尽に怒鳴られ言い返そうとするも、それより早くどこかへ走って行ってしまった。
「あらら、あれ妬きもちだよー」
「何であたしに妬くかな」
「真咲、最近茜くんばっかり構うから拗ねてるんでしょ」
「涼太しょっちゅう可愛い女の子に構ってもらってるじゃん」
「真咲は特別なんだよ」
はぁ、と溜め息が出る。先に行ってて、と真美を振り返る。大きい子供がいると大変だね、なんてからかうので、思わず吹き出した。
その大きな子供を連れ戻すために、走って行った方向へあたしも髪を靡かせ駆けた。
真美のくりくりとした大きな目があたしを見つめた。
何の前触れもなくいきなり言うものだから、間の抜けた声が出てしまう。
「付き合ってないよ」
「朝から早速噂になってるよ、手繋いで歩いてたこととか」
「茜くんモテるだろうから、あたし嫌がらせされるかも」
「そしたらあたしが全力で守るからね!」
ぎゅっと音がしそうなほど抱きつかれて、少し苦しい。この細い体のどこにそんな力があるのだろう。
よろめきながら真美を受け止めていると、後ろの方からあたしを呼ぶ低い声がした。振り返ると、声に聞き覚えもなければ見覚えもない男の子が二人。敬語で話しているということは後輩だろうか。
なかなか用件を言わない二人に真美が苛々したように何か用、と冷たく言い放った。彼氏が出来たとはいえ、男嫌いは健在のようだ。その言葉にびくりと肩を震わせた一人に苦笑していると、慌てたようにあたしに向き直った。
「矢田と付き合ってるって本当ですか?」
「あぁ…付き合ってないよ」
すぐにピンとこない名前を必死に頭の中で考える。そういえば最初の方は茜くんのことを、矢田くんと呼んでいたのを思い出した。
あたしがそう答えると、男の子がほっと息を吐いた。何か言いたそうに口を開くも、それは背中に走った衝撃によって阻止されたようだ。情けない声をあげて廊下に倒れた後輩に大丈夫かと問えば、力なく笑っていた。背後からいきなり飛び蹴りが直撃したのだから無理もない。蹴りをいれた張本人は、何やらふてくされたような表情で立っていた。
「はい、用済んだら帰れ」
「ひどいっすよ!いきなり蹴らないでくださいよ涼太先輩!俺まだ黒瀬先輩にアドレス聞いてないですって」
「うっせ。家の真咲に手を出したら許しません」
お父さんか、と心の中で突っ込むと、今度はあたしの方に向き直った。表情は依然として、ふてくされたような、拗ねた子供のようだ。
「お前の後輩人気意味わかんね!フリーになった途端モテてんじゃねぇよ!」
あまりに理不尽に怒鳴られ言い返そうとするも、それより早くどこかへ走って行ってしまった。
「あらら、あれ妬きもちだよー」
「何であたしに妬くかな」
「真咲、最近茜くんばっかり構うから拗ねてるんでしょ」
「涼太しょっちゅう可愛い女の子に構ってもらってるじゃん」
「真咲は特別なんだよ」
はぁ、と溜め息が出る。先に行ってて、と真美を振り返る。大きい子供がいると大変だね、なんてからかうので、思わず吹き出した。
その大きな子供を連れ戻すために、走って行った方向へあたしも髪を靡かせ駆けた。