永遠を繋いで
大体、どこに行ったのかなんて、付き合いも長くなってくれば簡単に見当はつくものだ。屋上に続く階段の踊り場に向かおうと、階段を上りだした時、丁度一人の女の子が下りてきた。確か、学年一美人という称号を持った子だ。上から来たということは、やはり涼太は踊り場にいるのだろう。以前、運悪く抱き合っている場に遭遇してしまったので、気まずさで顔を見ず上がろうとすると、高い綺麗な声があたしを呼んだ。

「連れ戻しに来たんでしょ?様子が変だったし気になったから来たんだけど、追い返されちゃった。随分機嫌悪いみたいだから、気を付けてね」

「え、うん。ありがとう」

「私がここにいたこと、内緒ね。彼氏が知ったら傷つくから」

ぽかん、と口を開けたままのあたしはじゃあね、と颯爽と歩いていく後ろ姿を見送った。彼氏いたんだ、と呟いた言葉は誰に届くこともなく、空気に消える。そう言われれば、彼女の左手には赤い糸が絡んでいた気がする。涼太にはないのだから、必然的に彼氏は別の男だ。美人のやることは分からない。

一段一段、階段を上っていくと見慣れたオレンジの頭を発見する。壁に上半身を預けるように座る涼太の隣に、あたしもしゃがみ込んだ。

「教室戻ろうよ」

「やだ」

「さっきの子も心配してたよ」

「…あいつも結局は彼氏が大事なんだ。俺のことなんて、やっぱ所詮顔しか見えてないんだよ。他の奴だってみんなそうだ、」

最初は好きだって縋ってみせても、時間が経てば離れていく。本気できてくれた女なんて一人もいなかった。所詮はお遊び。分かっていた。でも止めなかったのは、心のどこかで期待をしていたから。いつか本気で向き合える人に、会うかもしれないという期待。だけどそんなこと叶わない。それに、お前だって、と言葉を濁らせ続きはあたしの耳には届かない。

視線を下げ、馬鹿みたいだろ、なんて。力なく笑うものだから、あたしは困った顔で笑って否定をした。今の彼は、なんだか小さく見える。
涼太の顔を正面に向かせ、視線をかち合わせた。オレンジの奥にある、大きな瞳が不安気に揺れている。

「友達にいちいち言うものじゃないって言ったけど、一回だけ言うから聞いて。あたしはあんたが好き。離れようとも思わない。居なきゃ困るよ、大事な友達だから」

あんたの周りにはちゃんと、あんたを見てくれてる人がいるじゃない。
そう言えば、眉を下げふと微笑んだ。

「うん。ありがと。俺も好き。すげぇ好き。お前は特別!」

「はは、うん。それはどうも」

「茜にこのポジションは渡さねえからな!」

「何そこを張り合おうとしてんの」

無邪気に笑った顔を見て、まぁいいか、とあたしも笑う。

手を繋いで登校したあたしと茜くんに嫉妬して苛々していた、というのは教室に戻り盛大にからかった担任教師によって知ることになる。

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