永遠を繋いで
昼休みを知らせるチャイムが鳴り響いたと思ったとほぼ同時、茜くんが教室にやってきた。姿を見つけるや否や、こちらに駆け寄ってくる姿はまるで主人を見つけた犬のようだ。そんなことを思っていると、ふわふわと揺れる黒髪で視界がいっぱいになる。
「これ先輩が作ったの?」
机に広げた弁当箱を覗き込みながら茜くんが驚いたように言う。そういえば、学校では食堂か購買で何か買うようにしていたから、弁当は初めてだ。そうだよ、と返せば、意外っすわ、なんて生意気に笑っていたから軽く小突いてやった。
「真咲ね、お菓子とかも上手だよ」
「え、本当意外っすね」
「調理実習のあとは争奪戦だよー。今度の実習も大変かもね、フリーになってモテモテだから」
「いやモテてないってば」
「…本当自覚ないんだな、お前」
蓮が呆れたように笑うが、その台詞をそのまま返してやりたいものだ。イベント事があるごとに女子に追い回されて困っているのは自分のくせに。しかし真美の存在が知れ渡った今、そんな勇気ある人間は少ないだろう。彼女の恐ろしさは、入学当時に真美を妬んで嫌がらせをした先輩を返り討ちにしたことで知れ渡ったのだから。
「ねぇ真咲先輩」
「うん?」
「次の調理実習何作るんです?」
「えっと、ガトーショコラだったかな」
「それ俺にくださいよ」
にっこりという表現が似合うであろう、いい笑顔だ。こんなにいい顔で言われれば、断れないことなど分かっているのだろう。勿論、断る理由もないのだけれど。
「いいよ」
「あ、あとそれも欲しい」
見ていたのは残り少なくなった弁当で、食べかけのそれをそのまま渡そうとすれば、ゆっくりと開かれた綺麗な口。茜くんの目を見れば、食べさせろ、と視線が訴えている。なんだかその目に逆らえなくて、あたしの手が持つフォークは、そのまま茜くんの口の中へおかずを運ぶ。
近くにいたクラスメートはざわつき、その一連の流れを見ていた蓮は顔を赤く染めた。あたしもなんだか恥ずかしくなり、いたたまれない気持ちになる。
「教室で何してんだよ、茜…見てるこっちが恥ずかしい!」
「先輩もしてもらえば?」
挙動不審になる蓮を楽しそうにくつくつと笑って見ていた。挙げ句の果てに、真美にはへたれと罵られる始末。なんだか可哀想な気もするが、表情が忙しなく変わるのが可笑しくて止めるのをやめた。
「ねぇ先輩、もう一個。ほらあーん」
随分と甘える後輩は可愛いのだけれどやはり恥ずかしさの方が勝る。
しかし満足気に微笑む顔を見ただけで素直に従ってもいいと思う自分は、茜くんに甘いのだと自覚した。
「これ先輩が作ったの?」
机に広げた弁当箱を覗き込みながら茜くんが驚いたように言う。そういえば、学校では食堂か購買で何か買うようにしていたから、弁当は初めてだ。そうだよ、と返せば、意外っすわ、なんて生意気に笑っていたから軽く小突いてやった。
「真咲ね、お菓子とかも上手だよ」
「え、本当意外っすね」
「調理実習のあとは争奪戦だよー。今度の実習も大変かもね、フリーになってモテモテだから」
「いやモテてないってば」
「…本当自覚ないんだな、お前」
蓮が呆れたように笑うが、その台詞をそのまま返してやりたいものだ。イベント事があるごとに女子に追い回されて困っているのは自分のくせに。しかし真美の存在が知れ渡った今、そんな勇気ある人間は少ないだろう。彼女の恐ろしさは、入学当時に真美を妬んで嫌がらせをした先輩を返り討ちにしたことで知れ渡ったのだから。
「ねぇ真咲先輩」
「うん?」
「次の調理実習何作るんです?」
「えっと、ガトーショコラだったかな」
「それ俺にくださいよ」
にっこりという表現が似合うであろう、いい笑顔だ。こんなにいい顔で言われれば、断れないことなど分かっているのだろう。勿論、断る理由もないのだけれど。
「いいよ」
「あ、あとそれも欲しい」
見ていたのは残り少なくなった弁当で、食べかけのそれをそのまま渡そうとすれば、ゆっくりと開かれた綺麗な口。茜くんの目を見れば、食べさせろ、と視線が訴えている。なんだかその目に逆らえなくて、あたしの手が持つフォークは、そのまま茜くんの口の中へおかずを運ぶ。
近くにいたクラスメートはざわつき、その一連の流れを見ていた蓮は顔を赤く染めた。あたしもなんだか恥ずかしくなり、いたたまれない気持ちになる。
「教室で何してんだよ、茜…見てるこっちが恥ずかしい!」
「先輩もしてもらえば?」
挙動不審になる蓮を楽しそうにくつくつと笑って見ていた。挙げ句の果てに、真美にはへたれと罵られる始末。なんだか可哀想な気もするが、表情が忙しなく変わるのが可笑しくて止めるのをやめた。
「ねぇ先輩、もう一個。ほらあーん」
随分と甘える後輩は可愛いのだけれどやはり恥ずかしさの方が勝る。
しかし満足気に微笑む顔を見ただけで素直に従ってもいいと思う自分は、茜くんに甘いのだと自覚した。