永遠を繋いで
相思相愛だったはずの彼氏にさよならを告げられたのは、つい二時間前のこと。
彼と過ごした二年間、すれ違いも喧嘩もたくさん経験してきたし、悲しくて涙を流すこともたくさんあった。けれどそれと同じくらい楽しい思い出があるし、幸せを感じることもたくさんあった。
好きだとか、愛してるだとか、囁きあったあの言葉に嘘はひとつもない。
少なくとも、あたしはそうだった。
彼とあたしの間にも、いつかきっと赤い糸が現れると信じて疑わなかった。
しかし、現実はそう甘くないようだ。
彼と繋がった赤い糸が現れた先は、あたしじゃない別の女の子だった。素直で女の子らしくて、守ってあげたくなるような、あたしから見ても可愛い女の子。
彼は言った。あいつは俺がいないと駄目だから、一生かけて傍にいてやりたい、と。
お前は強いから大丈夫だろう、なんて言われて笑って頷いたあたしは大馬鹿だ。辛くて仕方ないくせに、幸せになってね、なんてどの口が言ったんだろう。
あんなに自分に向けられていた好きが他に向けられてしまうなんて、呆気ない。所詮あたし達の間にあったものなんて、その程度だったのか。
最初に赤い糸の存在を見つけた人を、殴ってしまいたいと思った。ちらりと視線をやった彼の指には、まだ薄いものの赤い糸が巻きついていて、その先にはやっぱりあの子の綺麗な指へと繋がっていた。
いっそこんなもの切れてしまえばいいのに、と手では触れられないそれを眺めて思った。あたし達から少し離れた場所で、心配そうにこちらを眺める新しい彼女と目が合った。ごめんね、確かに彼女の口はそう動いた。どうしてあの子が泣くのだろう。
ただただ彼女は綺麗に涙をこぼしていた。それを見たあたしの口は、またひとつ嘘を吐く。
ねぇ、早く行ってあげて。安心させてあげて。あの子にも幸せになってね、って伝えて。
最後まで笑顔で強がりを言って、なんて馬鹿なんだろう。
あたしはそのまま幸せそうに歩く二人の後ろ姿を見送った。結局あたしは彼の前で一度も涙を見せることはなかった。
こんな思いをするなら、あたしは運命なんていらない。赤い糸なんてもっといらない。馬鹿じゃないの、決められた運命なんて。
初めてしたあたしの『偽物』の恋は、幕を閉じた。