永遠を繋いで

真咲先輩に関わりたいがために、必然的に先輩達と関わることが増えた。
その輪の中に少しずつ入っていくようになって気付いたのは、真咲先輩はみんなに愛されているということ。正直、真美先輩はレズなのではと疑うくらい真咲先輩にべたべたしていた。所構わず抱きつく光景に見慣れたことも、それを羨ましいと思う自分も怖いものだ。もう末期だ、と頭の隅に過ぎる。
しかし所詮同性だ。警戒心を取り払った真美先輩に害はない。恐らく、蓮先輩は真美先輩のことが好きだろうから、ここも害はない。恐らく、というよりこれは確信だ。見ていてもどかしい相変わらずのへたれ振りが何よりの証拠だ。

問題は涼太先輩だった。俺が真咲先輩と話すのを邪魔しに入るのは、この人だけだ。いつも彼女をめぐっての攻防戦の繰り返し。
けれど、一緒にいる時間が長いのは同級生である涼太先輩の方が長いに決まっていて。喧嘩しながらも楽しそうに笑う真咲先輩の隣にいる彼がどうしようもなく羨ましく、苦しかった。
もう一つ、胸を締め付けるように苦しくなる瞬間があった。涼太先輩ですらも曇った顔をする、瞬間が。

真咲先輩には彼氏がいた。
同じ部活で、高橋大輔と名前までも平凡でどこにでもいそうな普通の先輩だった。けれどその隣を歩く真咲先輩の横顔はとても幸せそうで、俺に向けるものとは違う、俺の知らない女の人の顔。
あの位置になれないことが悔しかった。
涼太先輩が真咲先輩が幸せならそれでいい、そう言った表情を見て確信した。この人も彼女に恋い焦がれている。しかし叶えることを諦めていた。

俺は違った。諦めようなんて思いは初めからない。かと言ってあの笑顔を奪う気もない。
幸せを願って身を引くなんて、何もしようとしない、出来ない人間の言い訳だ。
いつか自分へ向くように、自分が彼女を幸せに出来るようになればいい話。だから俺は諦めてなんてやらない。
まだ彼女に赤い糸は現れていないのだ。自分にだって可能性はある。
馬鹿馬鹿しいと思っていた赤い糸とやらの存在が、俺と彼女を繋ぐものとなるならば運命を信じてやろう、なんて思ったのは俺だけの秘密。