永遠を繋いで
あれから先輩は泣くことが増えたように思う。
友人といる時は最初に会った時と変わらず、笑っている所しか見たことはないのだけれど。それは先輩達といる時も同じだったようで、誰も真咲先輩が隠れて泣いていることに気付いた様子はなかった。
真咲先輩は多分、気持ちを悟らせないというか、自分の感情を押し殺して平然を装うことが人より上手い。
ただ、俺はそんな時決まってする真咲先輩の、ある癖に気付いた。よほどの注意をして見ていなければ気付かないような、微妙で、些細なこと。
前髪を払う時に、一瞬眉を触るのだ。

俺が気付いたのは、本当に偶然だ。
部活で真咲先輩の彼氏ーーー高橋先輩に嫌味を言われるようになった。正確には俺と蓮先輩、そして涼太先輩の三人に対して、だ。恐らく自分の思うように、真咲先輩と上手くいかない八つ当たりだ。涼太先輩はよく怒って愚痴をこぼしていたが、俺は元々周りの言動にさして興味はなかったので相手にしていなかった。そんなことよりも、真咲先輩のことの方が心配だった。

周りの人が自分のせいで迷惑を被ることを、彼女は多分嫌がる。ましてその周りが親しい人間なら尚更だ。
そんな罪悪感を感じ、嫉妬していることも言えず、傷付けられる言葉を吐かれても彼女は何でもない顔をして笑っていて。なんて馬鹿な女、と思う。
けれど惚れた弱味というものなのだろうか。事ある毎に俺は先輩の所へ足を運ぶようになった。
真美先輩の心配そうな顔を見て、大丈夫、と困ったように笑ったあと、その癖を見つけた。部活の前に蓮先輩と涼太先輩の前でもそれをしたのを、思い出した。
そして一人で歩き出したその横顔は、屋上で見た時と同じものだと、気付いたのだ。

それを見る度、込み上げる感情は苦しくて、痛くて。
この感覚にはいつまでたっても慣れない。
< 26 / 76 >

この作品をシェア

pagetop