永遠を繋いで
一年振りくらいに、彼女が似合うと言って笑った髪型をした。向こうが覚えているかは分からないが、俺にとっては特別だ。初めてこの人をもっと知りたいと惹かれた、あの表情は忘れもしない。
今俺に向けられている笑顔だって、あの時と同じだ。覚えてたんだ、と言ったところを見ると真咲先輩も忘れてはいなかったらしい。彼女の笑顔は胸が温かくなる感じがする。
ふと、視線をずらしたのが間違いだった。きっと今、怪訝な顔をしたに違いない。前方に見える二つの姿に眉間に皺が寄ったのを感じた。
この学校は人数も多く部活は三年生に上がると同時に引退になるので、最近では見かけることすらなかった。下手をすれば、同学年でいても顔をあわせることもないはずだ。
なのにこんな、このタイミングで。
ちらりと真咲先輩に視線を落とせば、俺の制服を力強く掴む手に気付く。胸までも締め付けられた気分だ。
もうあの人を想って泣いてほしくなかった。今隣にいるのは俺で、彼女に一番近い男は、俺のはずだと思っていた。なのに心はまだ、ずっと遠い気がして。
泣きそうな表情への苦しさと醜い嫉妬で、心に何かが渦巻く。
言葉を発するのと体が動いたのは同時。
名前を呼んで制服を掴む手をとり、ゆっくりとその場から歩き出す。俺の冷たい手に馴染むような真咲先輩の体温が、ひどく心を落ち着かせた。戸惑ったような黒い瞳が俺を捕らえる。
「先輩の隣り、俺がいるじゃん」
そう言えば恥ずかしそうにはにかむ真咲先輩が可愛くて、口元が弛むのを感じた。
それを隠すように男前だなんて言うものだから、今更だと返してやれば可笑しそうに笑った。
繋いだ手を離そうとした時に寂しそうに見えた表情はただの俺の自惚れか、それとも。
今俺に向けられている笑顔だって、あの時と同じだ。覚えてたんだ、と言ったところを見ると真咲先輩も忘れてはいなかったらしい。彼女の笑顔は胸が温かくなる感じがする。
ふと、視線をずらしたのが間違いだった。きっと今、怪訝な顔をしたに違いない。前方に見える二つの姿に眉間に皺が寄ったのを感じた。
この学校は人数も多く部活は三年生に上がると同時に引退になるので、最近では見かけることすらなかった。下手をすれば、同学年でいても顔をあわせることもないはずだ。
なのにこんな、このタイミングで。
ちらりと真咲先輩に視線を落とせば、俺の制服を力強く掴む手に気付く。胸までも締め付けられた気分だ。
もうあの人を想って泣いてほしくなかった。今隣にいるのは俺で、彼女に一番近い男は、俺のはずだと思っていた。なのに心はまだ、ずっと遠い気がして。
泣きそうな表情への苦しさと醜い嫉妬で、心に何かが渦巻く。
言葉を発するのと体が動いたのは同時。
名前を呼んで制服を掴む手をとり、ゆっくりとその場から歩き出す。俺の冷たい手に馴染むような真咲先輩の体温が、ひどく心を落ち着かせた。戸惑ったような黒い瞳が俺を捕らえる。
「先輩の隣り、俺がいるじゃん」
そう言えば恥ずかしそうにはにかむ真咲先輩が可愛くて、口元が弛むのを感じた。
それを隠すように男前だなんて言うものだから、今更だと返してやれば可笑しそうに笑った。
繋いだ手を離そうとした時に寂しそうに見えた表情はただの俺の自惚れか、それとも。