永遠を繋いで
「黒瀬先輩って矢田と付き合ってんのかな」
廊下を歩いていると、そんな会話が耳に飛び込んできた。
校内で年上の黒瀬という姓の人物を俺は一人しか知らない。否、その人以外の黒瀬はいないはずだ。学校のほとんどの人物を把握している涼太先輩から以前聞いたことのある情報なので、間違いないはずだ。
そしてその矢田というのも自分を指していると思って間違いない。矢田という姓も俺以外にもう一人、学年主任のがたいのいい大男しかいないらしいからだ。
いつもならスルーしてしまうだろうが、真咲先輩のことで、ましてや話しているのが男だということに気付き足を止めた。思わず振り返ってしまったが、夢中なのかその男二人は俺の存在に気付いた様子もなく話を続けていた。
「あのサッカー部の先輩と付き合ってた小さい人?お前あの人好きなの?」
「可愛いじゃん。普通っぽくて。ほら、長く付き合ってたのに赤い糸が他の女に繋がっちゃって今なら傷心してるからつけ込んでいけるかなーとか思ったんだけどさ」
「お前きたねーな」
「うるせ。なんか最近矢田といるのよく見るし、仲良いし。あいつが懐いてる女って先輩だけらしいから怪しくねぇ?」
チャイムが鳴りその男が教室に入ったので、俺も自分の教室へ足を向けた。
懐いているとは随分な言い方である。まるでペットだ。俺達の間に勿論主従関係はない。しかしあまり人と関わることを好まない俺が彼女に心を開いているのは、端から見れば懐いているという表現が当てはまるのかもしれないと思った。
ただ他人にそう思われているのはどうも居心地が悪い。苛々しながら授業を終えると、追い討ちをかけるような内容のメールが送られてきた。
どうやら先程の二人は早速真咲先輩の所へ向かったようだった。いつもなら邪魔に入る涼太先輩だが、追い払ってくれたと聞いて存在を有り難く思った。しかしそれでも苛立ちは治まらず蓮先輩へ毒吐いた内容で返信してやる。一分としないうちに電話の着信を知らせるバイブが震えた。本当にこの人は暇である。
「…なんです」
『ねぇ何で俺が怒られんの?』
「むかつくからですけど」
『本当ひどいなお前。でも慣れたからめげないぞ!』
「…可哀想になってきました」
なんだかいたたまれない気持ちになったので、後で何か奢ってやろう。
それは兎も角、恐れるに足りないにしろ敵は少ない方がいい。もう少し、何か見せつけてやろうと睡魔に襲われつつある頭を必死に働かせた。
廊下を歩いていると、そんな会話が耳に飛び込んできた。
校内で年上の黒瀬という姓の人物を俺は一人しか知らない。否、その人以外の黒瀬はいないはずだ。学校のほとんどの人物を把握している涼太先輩から以前聞いたことのある情報なので、間違いないはずだ。
そしてその矢田というのも自分を指していると思って間違いない。矢田という姓も俺以外にもう一人、学年主任のがたいのいい大男しかいないらしいからだ。
いつもならスルーしてしまうだろうが、真咲先輩のことで、ましてや話しているのが男だということに気付き足を止めた。思わず振り返ってしまったが、夢中なのかその男二人は俺の存在に気付いた様子もなく話を続けていた。
「あのサッカー部の先輩と付き合ってた小さい人?お前あの人好きなの?」
「可愛いじゃん。普通っぽくて。ほら、長く付き合ってたのに赤い糸が他の女に繋がっちゃって今なら傷心してるからつけ込んでいけるかなーとか思ったんだけどさ」
「お前きたねーな」
「うるせ。なんか最近矢田といるのよく見るし、仲良いし。あいつが懐いてる女って先輩だけらしいから怪しくねぇ?」
チャイムが鳴りその男が教室に入ったので、俺も自分の教室へ足を向けた。
懐いているとは随分な言い方である。まるでペットだ。俺達の間に勿論主従関係はない。しかしあまり人と関わることを好まない俺が彼女に心を開いているのは、端から見れば懐いているという表現が当てはまるのかもしれないと思った。
ただ他人にそう思われているのはどうも居心地が悪い。苛々しながら授業を終えると、追い討ちをかけるような内容のメールが送られてきた。
どうやら先程の二人は早速真咲先輩の所へ向かったようだった。いつもなら邪魔に入る涼太先輩だが、追い払ってくれたと聞いて存在を有り難く思った。しかしそれでも苛立ちは治まらず蓮先輩へ毒吐いた内容で返信してやる。一分としないうちに電話の着信を知らせるバイブが震えた。本当にこの人は暇である。
「…なんです」
『ねぇ何で俺が怒られんの?』
「むかつくからですけど」
『本当ひどいなお前。でも慣れたからめげないぞ!』
「…可哀想になってきました」
なんだかいたたまれない気持ちになったので、後で何か奢ってやろう。
それは兎も角、恐れるに足りないにしろ敵は少ない方がいい。もう少し、何か見せつけてやろうと睡魔に襲われつつある頭を必死に働かせた。