永遠を繋いで
「あれ、何してんのお前」
「茜くん待ち。委員会なんだって」
「…毎日ご苦労様だなぁ」
涼太は呆れたように苦笑を浮かべ、あたしの机に腰を下ろした。
どこもかしこも空いているというのになぜ人の机に座るのだろうか。丁度目の前に図々しく置かれた腰を叩いてやると、反撃と言わんばかりに頬を抓られた。おまけにうわ、不細工、なんて笑い出すものだから油断した所で机を傾け落としてやった。
「いつにも増して反抗的だな!」
「あんたのせいじゃん」
「そんな攻撃的で嫌われても知らねえからなー」
笑う涼太と対照的に、自分の肩が強張り動きが止まった。
訊かなくとも誰のことを指しているのかすぐ理解した。今までそんな冗談など笑い飛ばしていたけれど、それが出来ないのはあたしの茜くんに対する気持ちの変化があったからだ。
「え、いや、冗談だって。まじでへこむなよ!あいつがお前のこと嫌いになるわけねぇし!」
反論しないあたしに焦ったのか、あたふたとしながら弁解を始めた。
泣きそうな顔するなよ、困ったように頭を撫でる涼太の言葉で自分の顔が歪んでいたことに気付く。ごめん、そう短く返せば心なしか声が弱々しくなってしまった気がした。
「…真咲さぁ、茜のこと好きになったの?」
「そうなのかな」
「そうなんだろうな」
あたしは肝心なことは隠してしまうタイプだと思う。故意にしていたわけではないが、癖のようなものだ。それが通用しなかったのは茜くんだけだった。
しかし今回は涼太にも同じことが言える。あたしが分かりやすく反応してしまったせいもあるのだろうが。
「お前茜のことばっかだし」
「…うん」
それから涼太は何も言わなくなってしまって、あたし達はただ無言で向かい合うように座っていた。その空気に堪えられず何か言わなくてはと顔を上げると、どくりと胸の辺りが嫌に脈打った。
涼太が泣くのを堪えるような顔をしていた。微かだが大きな瞳が揺れている。
どうして涼太がそんな顔をするのだろう。意味が分からなくて、けれど気の利いた言葉は何も出てこなくて。
この顔は前にも一度見たことがあった。そうだ、確か踊場で。きっとあの時と同じ、涼太は寂しいと感じている。
理解するのに言葉をかけないのも手を差し伸べないのも、あたしの中の何かが今は駄目だと訴えているからだ。何故かは、分からない。
「真咲先輩、」
何とも都合が良いというか、まるで見計らっていたかのようなタイミングであたしを呼んだ茜くんの声にはっとした。あたしはじゃあねとだけ言葉を残して、逃げるように茜くんの元へ駆けた。
「茜くん待ち。委員会なんだって」
「…毎日ご苦労様だなぁ」
涼太は呆れたように苦笑を浮かべ、あたしの机に腰を下ろした。
どこもかしこも空いているというのになぜ人の机に座るのだろうか。丁度目の前に図々しく置かれた腰を叩いてやると、反撃と言わんばかりに頬を抓られた。おまけにうわ、不細工、なんて笑い出すものだから油断した所で机を傾け落としてやった。
「いつにも増して反抗的だな!」
「あんたのせいじゃん」
「そんな攻撃的で嫌われても知らねえからなー」
笑う涼太と対照的に、自分の肩が強張り動きが止まった。
訊かなくとも誰のことを指しているのかすぐ理解した。今までそんな冗談など笑い飛ばしていたけれど、それが出来ないのはあたしの茜くんに対する気持ちの変化があったからだ。
「え、いや、冗談だって。まじでへこむなよ!あいつがお前のこと嫌いになるわけねぇし!」
反論しないあたしに焦ったのか、あたふたとしながら弁解を始めた。
泣きそうな顔するなよ、困ったように頭を撫でる涼太の言葉で自分の顔が歪んでいたことに気付く。ごめん、そう短く返せば心なしか声が弱々しくなってしまった気がした。
「…真咲さぁ、茜のこと好きになったの?」
「そうなのかな」
「そうなんだろうな」
あたしは肝心なことは隠してしまうタイプだと思う。故意にしていたわけではないが、癖のようなものだ。それが通用しなかったのは茜くんだけだった。
しかし今回は涼太にも同じことが言える。あたしが分かりやすく反応してしまったせいもあるのだろうが。
「お前茜のことばっかだし」
「…うん」
それから涼太は何も言わなくなってしまって、あたし達はただ無言で向かい合うように座っていた。その空気に堪えられず何か言わなくてはと顔を上げると、どくりと胸の辺りが嫌に脈打った。
涼太が泣くのを堪えるような顔をしていた。微かだが大きな瞳が揺れている。
どうして涼太がそんな顔をするのだろう。意味が分からなくて、けれど気の利いた言葉は何も出てこなくて。
この顔は前にも一度見たことがあった。そうだ、確か踊場で。きっとあの時と同じ、涼太は寂しいと感じている。
理解するのに言葉をかけないのも手を差し伸べないのも、あたしの中の何かが今は駄目だと訴えているからだ。何故かは、分からない。
「真咲先輩、」
何とも都合が良いというか、まるで見計らっていたかのようなタイミングであたしを呼んだ茜くんの声にはっとした。あたしはじゃあねとだけ言葉を残して、逃げるように茜くんの元へ駆けた。