永遠を繋いで
兎にも角にも、苛々していた。誰が、なんて言うまでもなく、今あたしの隣りから離れない、可愛い可愛い後輩が、である。

「お前いつまでそうしてる気」

「先輩に関係ないし」

「真咲から離れろ」

「あんたが離せや」

両腕を涼太と茜くんに引っ張られた状態のまま、かれこれ数十分が経過している。痛くはないのだけれど、もっと周りの目を気にしてほしいものだ。ちらりと教室の外に視線をやれば、見知らぬ女子がちらほら。
言わずもがな目当ての人物はあたしの両隣りであって、心なしかこちらを見つめる瞳には嫉妬というか怒気が含まれている気がしないでもない。
未だ終わることのないやり取りに小さく溜め息を吐いた。

茜くんの不機嫌の原因である人物は、そこに立っている先日の女子だ。どうやら諦めが悪いらしく、茜くんは逃げるようにしてあたしの元へやってきた。そんなあたし達を見つけた涼太が不機嫌な彼に掴みかかったものだから一触即発、今に至る。
一向に終わらない口論は激しさを増すばかりだ。毒を吐くのは日常茶飯事にしろ、茜くんがここまで暴言を吐くのは些か珍しい。涼太もまた然り。
このままでは本格的に喧嘩を始めるのでは、そんな不安が過ぎり遠くで見守ることを決め込んでいた真美に救いを求めて視線を投げれば、待っていたと言わんばかりに小走りでやってきて二人の頭を思い切り叩いた。
いい音が鳴った、なんて頭の隅で思っていると標的を変えたらしい二人に真美が言葉を吐き捨てた。

「お前らみたいなガキな奴真咲は嫌いなんだよ」

ぴたり、と動きが止まり二人が同じ顔をしながらあたしを振り返った。解放された腕を今度は真美にとられる。
口調は乱暴だが、その表情は実にいい笑顔である。

「真咲はあたしと帰るから。二人で反省しなよねー」

オロオロとしていた蓮も引き連れ、颯爽と歩いている真美の後ろをついていくものの、反応を示さなくなった二人が気になり振り返ると呆気にとられたような、なんとも間抜けな表情をしていた。

「あー…仲直り、ちゃんとしてね?」

最後まで間抜け面で無言だった二人が、言葉通りに仲直りしてあたし達を追いかけてくるまで、あと数分のことである。
女の子達はどうしたのかと訊けば、こっぴどく振り払ってきたようで、タイミングよく泣きながら歩く姿が視界に入った。同情と共に、また敵が増えたな、と他人事のように頭を過ぎった。
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