永遠を繋いで
「先輩?」

「…ありがとう」

きょとんとした顔をしたあと、茜くんはすぐまた笑った。
少し長めの前髪がさらさらと揺れ、その奥の優しさを含んだ瞳があたしを見つめる。

「いいっすよ」

「ん、」

「涙、止まりましたね」

「…顔きっとひどいから、あんま見ないで」

「大丈夫っすよ。可愛い」

恥ずかし気もなくさらりと口にするものだから、あたしが恥ずかしくなって顔を逸らした。普段はクールで生意気で可愛げがないと涼太がぼやいているけれど、あたしから見ればそんなことはない。むしろこうして照れるあたしに笑顔を向け、すり寄ってくる姿は、甘えたで可愛い年下の男の子そのものだ。
上目遣いでちらりと覗けば、首を傾げてまたふわりと笑う。
あたしよりもずっと高い背に、大人びた綺麗に整った顔。改めてまじまじと見るその姿に、なんだかどきりとした。

「見とれてんですか」

「…うん。かっこいいなぁと思って。ずるいくらいに」

「……それがずるいっすわ」

小さく呟いたそれが聞こえなくて、聞き返せば困ったような笑顔で何でもないと返されてしまった。
今日の茜くんは、なんだかよく笑う。あたしもその綺麗な笑顔を見て、つられて笑った。
授業の終わりを知らせるチャイムが鳴る頃、悲しい気持ちが消えていたあたしは単純だ。
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