永遠を繋いで
HRも終わったであろう時間を見計らって教室に戻ると、三人がまだ残っていた。
涼太があたしを見つけると、悪戯に顔を歪ませて携帯を弄っていた手を止めた。

「すっきりした顔してんなぁ」

「まぁね」

「んじゃ、話は後で聞くとして。マック行こ、今日くらい奢ってやる」

「いや本当どうしたの、こわい」

「お前人の善意をなんだと思ってんの。俺なりの優しさだろうが」

「そんな顔しないでよ。冗談だって。ありがと」

お礼を言われて満足したのか、行くぞーと先頭をきって走って出て行った。扱いやすいな、という言葉は飲み込んで、真美と蓮に挟まれるように並んで後を追った。

「あいつも結構心配してたんだよ。なんだかんだお前のこと大好きだからさ」

「まぁうちらもだけどねー。ちょっと回復したみたいで一安心」

「ありがとね。もう二人とも大好き」

駐輪場まで三人で手を繋ながらふざけあっていたら、先についていた涼太が拗ねた顔で割り込んできた。仲間外れにすんな、と喚きながら、玄関の方に目をやり今度は茜くんの名前を叫んだ。忙しい男だな、と思いながらあたしも涼太の視線の先を辿ると、怪訝な顔をした茜くんが歩いてきた。

「先輩うるさいっす。馬鹿がうつるんで寄らないでくれます?」

「お前本当かわいくねー!真咲に近付くな、そこ、離れろ!」

「だって、どうします?」

「えー、離れたくない」

からかいにのってやると拗ねた涼太が楽しそうに眺めていた真美と蓮に泣きつく真似をした。それまでも蓮にあしらわれたようだが、なんだか楽しそうである。

毎日繰り返されるその変わらない光景に、口元が弛んだ。
昨日の今日でまだ完全にとはいかないものの、気が紛れるし自然に笑うことができる。みんながくれる居場所は暖かい。

もう、涙の気配はなくなっていた。
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