永遠を繋いで
あの教室での出来事以来、涼太の態度が前以上にあからさまなものになった。あたしに好意をむき出しにするようになり、涼太を取り巻いていた女子から妬まれるようになったのも、最近の話だ。

彼氏がいる人や赤い糸が現れている人が多いからか、オープンな嫌がらせこそないものの、陰口は増えたように思う。以前から仲が良かったのでそれは度々あったのだが、今はそれ以上だ。
言いたいことがあれば本人に言うべきだと、あたしは思う。これなら茜くんのことを好きだと言っていた彼女達の方がまだマシだった。

一々相手にはしていないのだが、それが余計に反感を買ったらしい。あることないこと、外野は言いたい放題だ。
さして気にしてはいないが勘弁してほしいというのが正直なところである。

この体育の授業は憂鬱だった。球技なんて名ばかりの的当てゲームじゃないか。
逃げ切ったものの、たまに飛んでくるボールはわざとなのか。見学していた真美の元へへたり込むと、また転がってきたボールを今度は真美が拾った。本当に勘弁してほしい。深く深く、溜め息を吐くと真美がにっこりという表現が似合うであろう可愛らしい笑みを浮かべ、あたしを振り返る。

「誰に当ててやろうか?」

発言に似つかわしくない高く、可愛らしい声が上から降ってきた。
え、と思わず引きつってしまうもお構いなしに、あいつとかどう?なんてこれまた可愛らしい笑顔で訊いてくる。
何か察知したらしい、あたしを狙っていたリーダー格と思われる女が逃げ出した。それを合図に、

「めんどくさいから全部でいっかー」

なんとも楽しそうに走り出した彼女。
そのボールに殺気のようなものが込められているのは気のせいだろうか。

まぁいいか、なんてその光景をぼうっと眺めた。
見学していた隣りに座る友人によしよしと頭を撫でられる。

「あんた今年人生最大のモテ期だね。真美ちゃんは年中あんなんだけど」

「…モテるのも大変なんだね」

「私には無縁だからわかんないけど」

あ、当たった、なんて無表情で呟くものだからそれが妙に可笑しくて笑ったらコツンと頭を叩かれた。

「八方美人はやめて早くどっちかに決めることだね。どっちともハッピーエンドなんて迎えられないんだよ。あの子等だって少なからずそれに苛立ってる」

「厳しいお言葉で、」

「あんたを思っての厳しさでしょうが。いつも甘やかされてる真咲には私みたいに厳しく躾てくれる人が必要よ」

「そうかも。ありがとうね」

厳しいけれど、言っていることは正論だ。
素直にお礼を言えば、髪をかき回すように頭を撫でられた。荒っぽいけれど、顔を見れば満足そうに口元が弧を描いている。その顔がなんだか茜くんのそれに似ていて思わず口にすれば、私が男ならあんたの彼氏はごめんだよ、なんてまた笑われた。
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