永遠を繋いで
「お前等今日補習な」
終わったら持ってこい、と渡されたのは目が眩むような数のプリントだった。
苦手だからとサボっていたツケが今になって山積みになり、あたしの目の前へ。同じものがまた、隣りの、涼太の前へ。逃げる暇すら与えられず、顔を合わせて苦笑い。
「二人共他の奴に比べてサボリ多過ぎ。これで許してやるんだから有り難く思えよ」
どうやら他に補習はいないらしい。
手伝った奴はペナルティーだという発言のせいで、蓮達はそそくさと退散していった。薄情者!と叫んだ涼太の声が廊下に向かって虚しく響く。
騒いだって仕方ない、茜くんの部活が終わるまでにやってしまおうとプリントに取り掛かることにした。あの教師の発言は、いつだって本気だ。逃げればまた追加分を渡されることだろう。
「真咲見して、写さして」
「自分でやりなさい」
「けち」
そう言いながらも机を寄せて体を乗り出してくる。
図書室でのことを思い出し、ちらりと逃げ道を確認して、涼太に視線を投げた。
何?そう目を輝かせあたしを振り向く涼太に、少しだけ胸が痛んだ。期待されるようなことを言うわけではない。
話かけた時、よくこんな顔をするようになった。それがどんなに些細なことでも、である。だから尚更この顔を見ると言い出せなくなってしまう。
決心が鈍る。
けれど言わなきゃいけない、と意を決して口を開けば、狙っていたかのように間の抜けた音楽が静かな教室に鳴り響いた。涼太の携帯だ。
ばつが悪そうに笑うと、携帯を確認してそのまま机に置いた。依然としてそれが鳴り止む気配はない。
出なよ、と促すと未だ鳴り続けるそれに観念したのかしぶしぶとそれを耳に当てた。
「何?」
つまらなそうな声を出すと、それに反比例するような馬鹿みたいに大きい女の声が涼太が何か答える度に聞こえてくる。
会いたい、会いたいとせがむ女の声と、渋ったように返事をする涼太の声が耳に入り込んでくる。課題を進めているうちに、結局涼太が折れて話は終わったようだ。
今日はどの彼女だろうか、なんて先程まで考えていたことが頭の隅に追いやられてしまう。女遊びは相変わらず、のようだ。
涼太のことを好きな女の子はたくさんいるのに、どうしてあたしを好きだと言うのだろう。愛されたいのなら他をあたった方が賢明だ。
考えれば考えるほど、よく分からない。
何考えてんの、そう言ってしまいたい。
思考がぐちゃぐちゃになる前に目の前の課題に専念しようと、ひたすらプリントとにらめっこを始めた。
結局、今日も言うことは出来なかった。
終わったら持ってこい、と渡されたのは目が眩むような数のプリントだった。
苦手だからとサボっていたツケが今になって山積みになり、あたしの目の前へ。同じものがまた、隣りの、涼太の前へ。逃げる暇すら与えられず、顔を合わせて苦笑い。
「二人共他の奴に比べてサボリ多過ぎ。これで許してやるんだから有り難く思えよ」
どうやら他に補習はいないらしい。
手伝った奴はペナルティーだという発言のせいで、蓮達はそそくさと退散していった。薄情者!と叫んだ涼太の声が廊下に向かって虚しく響く。
騒いだって仕方ない、茜くんの部活が終わるまでにやってしまおうとプリントに取り掛かることにした。あの教師の発言は、いつだって本気だ。逃げればまた追加分を渡されることだろう。
「真咲見して、写さして」
「自分でやりなさい」
「けち」
そう言いながらも机を寄せて体を乗り出してくる。
図書室でのことを思い出し、ちらりと逃げ道を確認して、涼太に視線を投げた。
何?そう目を輝かせあたしを振り向く涼太に、少しだけ胸が痛んだ。期待されるようなことを言うわけではない。
話かけた時、よくこんな顔をするようになった。それがどんなに些細なことでも、である。だから尚更この顔を見ると言い出せなくなってしまう。
決心が鈍る。
けれど言わなきゃいけない、と意を決して口を開けば、狙っていたかのように間の抜けた音楽が静かな教室に鳴り響いた。涼太の携帯だ。
ばつが悪そうに笑うと、携帯を確認してそのまま机に置いた。依然としてそれが鳴り止む気配はない。
出なよ、と促すと未だ鳴り続けるそれに観念したのかしぶしぶとそれを耳に当てた。
「何?」
つまらなそうな声を出すと、それに反比例するような馬鹿みたいに大きい女の声が涼太が何か答える度に聞こえてくる。
会いたい、会いたいとせがむ女の声と、渋ったように返事をする涼太の声が耳に入り込んでくる。課題を進めているうちに、結局涼太が折れて話は終わったようだ。
今日はどの彼女だろうか、なんて先程まで考えていたことが頭の隅に追いやられてしまう。女遊びは相変わらず、のようだ。
涼太のことを好きな女の子はたくさんいるのに、どうしてあたしを好きだと言うのだろう。愛されたいのなら他をあたった方が賢明だ。
考えれば考えるほど、よく分からない。
何考えてんの、そう言ってしまいたい。
思考がぐちゃぐちゃになる前に目の前の課題に専念しようと、ひたすらプリントとにらめっこを始めた。
結局、今日も言うことは出来なかった。