永遠を繋いで
休日の、お昼のことだった。
がやがやと騒がしい店内で、向かい合わせに座る蓮と真美が訝し気に顔を潜めてある一点を見ていた。同じ表情で、たまにひそひそと話してはまたその一点を見つめて、を先程から何回繰り返したことやら。

今日は所謂ダブルデート。
真美がしてみたい、とあたしに電話してきたのだ。丁度家で茜くんとごろごろと暇を持て余していたので、二つ返事で了承したのだが先程から、というよりも席についてから二人はこの調子だ。

最初はさほど気にもならなかったのだが、こうも続くと気になってしまう。それは茜くんも同じようで、眉をひそめながらついに口を開いた。

「…さっきからなんなんすか」

蓮があー、うー、など妙な声で唸りながら困った表情を浮かべる。
はっきりしないその態度に訝しげな顔で茜くんが二人の視線の先を辿ると、あ、と声を漏らした。
あたしも気になって振り返ると、同じくあ、と声が出る。

「最近さ、前よりもひどくなってるんだ」

溜め息混じりの声で蓮が呟いた。
何が、なんてその光景を見れば一目瞭然。涼太の女遊びが、である。

今日の女の子は今までに見たことのない子だった。
ナチュラルメイクの、いかにも男受けしそうな可愛らしい女の子。涼太がしょっちゅう連れ歩いている子達とは正反対のタイプだ。
清楚な雰囲気の彼女は、何やら積極的に話をかけていて、涼太は涼太でそれを楽しそうに聞いている。知らない人が見れば、どこからどう見ても仲睦まじいカップルだろう。

やはりあたしじゃなくてもいいじゃないか、と思いながら二人に向き直りストローを啜った。
あたしにあんなことを言うわりに、激しくなる女遊びを見ていると、そもそも本気なのかどうかを疑ってしまう。別に苛立ちや嫉妬のような感情は湧かなければ一々どうこう言おうとも思わないが、蓮がひどくなった、と言うくらいだから目に余るものがあるのだろう。

あたしが言うのもなんだが、注意くらいしてやるべきか。
ぼんやりそんなことを考えていると茜くんがぽつりと呟いた。

「あの人が何考えてんのか分かんないっすわ」

鋭い目が冷ややかに細められていた。
多分感じているのは、嫌悪やその類いの感情。それを今、涼太に向けている。
女遊びなんて今に始まったことではないし、それに干渉しようとすることはなかった。それはあたし達も一緒だが。

茜くんがこんな風にあからさまに顔に出すのは初めてだ。
そして、黙ったままの真美も複雑な表情をしていることに気付く。

ただ二人に何と言えばいいのか、言葉が見つからなかった。
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