シンデレラとバカ王子
匠はゆっくりと話し始めた。早くしろって言ってるのに

「前社長、灰音様のお父様は自分に何かあったときの為に、あなたの年齢に合わせての遺言を残していたんです」

「遺言ね…。10才の私に残した遺言の内容って?」

「はい。灰音さまの好きにさせろとのことでした。我々には密かに灰音様のサポートをせよ。そして20才になった歳に家を継ぐかどうかを灰音様に選んでいただくようにとのことです」

自由にしろか。父さんらしいな。
「それで、向かえに来たってわけか。で、私と関係のある姉ちゃんに近づいたのか?」

「奏さんのことは、資料の中で勿論知ってました。一目惚れなんです…。いけないことだと分かっていましたが、お店に行ったんです」

こいつ随分と情熱的だな。でも姉ちゃんをおとしめるみたいなことをするつもりはないと思って安心した。

突然、姉ちゃんがあっと声を上げた。

「匠さん、昨日バカ王子が私に、婚約者殿に何かあっても良いのか?って言われたけど、あの今、来ているアスベル王子と関係ある?」

あいつ、アスベルって言うのか。日本名しか聞いてなかったからな。

「うん。まぁ…知ってるよ。あの店を教えたのは、オレだし」

お前のせいで、私があんなことになったのか!思わず、テーブルのしたの匠の足を踏ん付けた。

反対側の足は姉ちゃんが踏ん付けていた。

涙目の匠から、今日は一緒に一度、会社に来て欲しいと言われた。
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