シンデレラとバカ王子
「灰音さまお帰りなさいませ」

まるで、社長か会長かの勢いで迎えられて焦った。

「何でこんなに歓迎されてるのさ」

「現社長に皆さん不満が多いんですよ。ずっと灰音さまを待っていらしたんです」

期待されても困るんですけど、会社の経営なんてできないし。

最初に通されたのは、会議室の様なところだった。

「どうも！」

一番上座にいる化粧の濃いおばちゃんと成金趣味っぽい紫のスーツを着た男が目を丸くしてこっちを見ている。

「灰音！どうして」

「弁護士殿に呼び出されてね。二十歳になったし、一応ケジメつけようと思ってね」

「今更おまえが出てきてもお前なんかに会社は渡さない」

「この会社に興味はないけど、おじちゃんたちには、私を自由にしてくれてた恩義があるだけ」

匠の父親、黒瀬のおじちゃんが何かの箱をもってきた。記憶の中のおじちゃんよりかなり頭が真っ白になっている。

「では、灰音様が二十歳になってから開けるようにと社長、灰音様のお父上から預かった遺言状を開封させていただきます」

遺言状？聞いてないんですけど？匠を見るとただ頷くだけだった。

誰も頷けとは言ってねぇって！私が面倒くさくなるって逃げると思って、言わなかったな。

「遺言！今更どうして」





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