ヴァムピーラ
市内某所で行われた河島さんの写真展。私はいつものウィッグをかぶって、そこにきていた。
中に入って写真を見て回った私は、すぐに驚きに言葉を失うこととなった。
生き生きとした、出会ったこともないような素敵な一瞬。
それを、河島さんは形に残していた。
私が撮りたくても、撮れないような、そんな一瞬。
夢中になって写真を見て回っていた私は、ふと一枚の写真に目を奪われた。
白い小さな花の集まりが、一つの花をかたどっている。
紫陽花や菜の花に似ているけど、白いものは見たことがない。
でも、何の花かなんて関係なかった。
「綺麗・・・」
小さな花が、私を見て、とでも囁くように咲いている。
光のフレアが絶妙に花を飾り、自然が織り成す美を強調している。
「・・・Alyssum」
陶酔しきって写真を眺めていた私の耳元で、突然誰かが何かを囁いた。
驚いて振り返った私は、二度驚いた。
「リキ・・・」
そこには、帽子を目深にかぶったリキが立っていた。
シルバーブルーの瞳を細めて、にやっと笑うリキ。私はその瞬間、心臓が鳴るのを感じた。
「その花、アリッサムっていうんだよ」
「え?」
私は突然の再会の衝撃から立ち直れないまま、呆けた声を出す。