ヴァムピーラ

「例えば目が一個しかなかったり、鼻がなかったりしたら普通じゃないだろうけど」
「それは・・・論点が違う」
「そうか?同じだろ」

 そのとき、私は見逃さなかった。リキが、とても寂しそうな表情をしたことに。

「・・・?」
「カノンは、気にしすぎだ。この世に全く同じ人間がいるとでも思ってるのか?」

 私はリキの何もかもを見通してしまいそうな目に負けじと、それを見つめ返した。

「花だって、動物だって、みんな一つ一つ違うんだ。普通って、何が基準なわけ?」
「・・・」

 何かを言い返そうとして口を開いたけど、何も言葉が浮かばなくて私は唇をかみ締めた。
 全く同じものなんてこの世にはいない、そんな当たり前のことを胸を張って言えるリキが、私は羨ましかったのかもしれない。
 だけど、出る杭はいつも打たれるんだ。
 何も言えずにじっとリキを見ている私。そんな私にリキがふと優しい笑みを浮かべた。

 どきっ・・・

「まあ、カノンの気持ちもわからないではない。人は目立つものを避けようとするからな」
「え・・・」

 そのときだった。
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