ヴァムピーラ
「リキぃー?」
甲高い甘ったるい声とともに、一人の女がリキにしなだれかかった。
女は思い切り私を睨みつけた。
「あ、麻美」
「なかなか出てこないと思ったらぁ」
鼻にかけたしゃべり方が気持ち悪くて、私は顔をしかめる。茶色い髪を巻いて、派手なコートを着た、目に痛い女だった。
〝・・・趣味悪い〟
こんな人と一緒にいられるリキの神経を疑う。
「早く行こうよぉ。イイコトしたから、お腹減ったんでしょぉ?」
私に見せつけるように、言う彼女。目を細める私に、リキがしまったという顔をして、
「あー、麻美、腹減ったなら食べてくれば?」
「ええぇ?何言ってるのぉ?リキも一緒に来るんだよ!」
「俺はほら、この子に用があるから」
悪びれもなくそんなことを言うリキに、私は呆れを通り越して感心してしまった。それでも、麻美という女の人は納得がいかないようで、
「ご飯食べた後も可愛がってくれるって言ったじゃないっ」
恥ずかしげもなくそんなことを、昼間の写真展で言う彼女。リキは頭をかいて、
「いや、別に麻美が俺についてきたいなら構わないけど、俺、これ以上は付き合う気ないから」
「何それ!」
リキの言葉に、彼女は怒りで顔を真っ赤に染めた。リキの意図がわからず、私も彼を伺った。
リキは、今まで見たことがないような冷たい目をしていた。