ヴァムピーラ
「声をかけてきたのはそっちだろ?」
「っ・・・!」
彼女はもう一度私を睨みつけて、リキを睨みつけた。
「最低っ!」
「最低で結構」
涼しい顔のリキに、彼女は地団太を踏んだ。そして、その場から去っていった。
「・・・あの」
「ん?」
私はため息をついて、
「どうでもいいけど、修羅場に私を巻き込むのはやめて」
「ごめんな」
苦笑するリキは、優しい顔をする。さっきの冷たい目が、嘘のような。
「デートの最中なら、私に声をかけなくても良かったのに」
「デートなんかじゃない」
リキは、鼻で笑った。
「あの女が声をかけてきたから、誘いに乗っただけ。俺が帰ろうとしても、しつこくついてきただけだ」
「は?」
「そしたら、ちょうどカノンが見えたから、あいつのことなんか忘れて話し込んでたってわけ」
天晴れな言い訳だ。