ヴァムピーラ
 明らかに不機嫌な私に、リキは困った顔をして、

「そんなしかめ面すんなって、せっかく可愛い顔してるんだから」

 そう言って私の頬に触れようとした。

「触らないで」

 だけど私は、その手を振り払っていた。
 ついさっきまで、女を抱いていたような人に触られたくなかったから。

 リキは振り払われた手と、私の顔を交互に見やった。
 そして、にやりと笑うと、

「何、嫉妬してるの?」

 そうやって頭に血が上るようなことを言ってのける。

「・・・貴方に」
「うん?」
「少しでも興味を持った私が馬鹿だった」

 私はそう言ってリキに背を向けた。

 一度は、リキを自然の最高傑作だと思ったのに。
 あんな態度を見せられたら幻滅する。

 歩き出した私の後を、リキがついてくる。
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