ヴァムピーラ

「何怒ってるわけ?」
「ついてこないで」

 そして、こうやってわたしに関わろうとするリキに、腹が立つ。

「カノンはさ、何でそんなにカリカリしてるわけ」
「誰のせいで・・・っ」

 声を荒げて振り返って、息を呑んだ。
 シルバーブルーの瞳と目が合った瞬間、身体が動かなくなったから。

 あの夜リキが見せた真剣な顔。
 今、彼が纏っていたのはあの時と同じ雰囲気。
 まるで、誰の反論も許さないような、王者の風格。

「カノンは、俺にどうして欲しい?」
「・・・え?」

 意味がわからず、思わず聞き返した。
 本当は、圧倒されていたのかもしれない。リキが放つ、只者ではない雰囲気に。

「他の女達はさ、俺が望まなくても俺にちょっかいかけて来るんだよな」
「はぁ?」
「だけど、カノンは最初から俺を拒絶してる」
「・・・」

 だけど、負けたくなかった。
 リキの放つ雰囲気に飲み込まれないように、私は虚勢を張る。
 大体、頼まれてもこんな下半身にだらしのない最低な男はお断りだ。
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