ヴァムピーラ
「じゃあ、君がカノンちゃん?」
「はい」
男の人は目を細めて、
「本当に、ミウにそっくりだ」
「そう、自慢の娘なんだ。カノン、こちらは河島英輝(かわしまひでき)、プロのカメラマンだよ」
「どうも、カノンです」
ミウィリアというのが、母の名前。ミウというのはモデル時代の名前で、今でもそう呼ばれている。
「専門学校に通ってたんだって?」
「はい」
河島さんはじっと私を見てきた。私はきょとんとそれを見つめ返す。
「なるほど、性格は爽幻(そうげん)にそっくりってわけか」
「はは、さすが英輝は人を観察させたら右に出るやつがいないな」
「伊達に人を撮ってないからな」
私は驚いて河島さんを見ていた。河島さんは興味深げに私を見て、
「来てみるかい?来週の撮影」
私がどう応えるか、観察されていると直感した。河島さんが私を見る目は、興味深そう。
私はやっぱり即答できない。
「行って来い、カノン。社会勉強のうちだぞ」
「・・・わかった」
しぶしぶと言っても良いような声が出た。でも、少しだけ。少しだけ興味があった。
私とは違って、人を被写体にするこの人の仕事が気になった。