ヴァムピーラ
「私、写真を撮り始めたきっかけは、一瞬で過ぎていく綺麗な景色をとどめておきたいって思ったからです」
「ああ、気持ちはわかる」
「でもその対象はいつも自然で、人になったことはない」
河島さんは目を細めて、微笑んだ。
「君は、中身は爽幻にばっかりそっくりかと思ったら、やっぱりミウにも似ているんだね」
「え?」
河島さんは、大きな重そうな扉を開いた。中は暗がりで、たくさんの人がせわしなく動いているのがわかった。
「さ、入って」
「あ、はい」
息を呑んで立ちすくんだ私の背を押すように、河島さんが部屋に入る。
「英輝さんおはようございます!」
「おはようございます!」
河島さんに気づいたスタッフが挨拶をする。河島さんも片手を挙げてそれに応えた。