一般人になるまで
とりあえず、助かりそうなヤツには包帯を巻いてやり、もう助からないと判断したものは、俺の手で殺す

拓人が人殺しをしたいと夢みて願うのは、この異常な空間が理由だった

母は、首を絞めたり、刃物で体の部位を切ったりするが、殺しはしない
猫は、すぐ死んじゃうから手加減が大変、と前にぼやいていた
そんなんなら、しなきゃいいのにと言う言葉は飲み込んだ


母は何より苦しむ顔が好きなのだ
俺が小学五年生まで被害を受けなかったのは、父がいたから
片足が不自由で
いつも松葉杖で過ごしていた父に、
お父さんの足は僕が治してあげるの!
と言ってあげた日
父は泣いた
次の日、父は松葉杖ではなく車椅子になっていた
父にはもう治せる足がなくなっていた

それから三ヶ月後
父がいなくなっていた

父は毎日のように病院に通っていた
入院も繰り返していた
生まれつき片足が不自由で、リハビリに行っていると思っていたから
また、暫く入院になったのだと最初は思った
しかし、何日、何ヶ月、何年待っても父は帰って来なかった
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