一般人になるまで
それなのに、彼女は私に謝っては来なかった

ただ一言
あのときはごめんなさい
それを言えば、私がみんなを宥めて(なだ)美しい友情の出来上がり
そのはずだったのに

彼女は私に謝りも怒りもせず、屋上から飛び降りた

グチャリと、地面に叩き付けられて、簡単に死んだ
人間の命は儚い

遺書には、いじめのことがこと細かに書かれていた
岸谷さんが主犯格
と、書かれていた

いじめていた子が死んだことで、教室の空気は急変した
今まで、優しくしてくれた先生は私ばかりに強くあたり、仲良くしてくれていた友達は目すら合わせてくれなくなった
自分たちもしていたくせに、という言葉は飲み込んだ


家に帰れば、玄関に赤いペンキで『人殺し』書いてあり、ドアを開けるとと泣き疲れてふせている母と仕事を辞めた父がいた
きっと人殺しの親だと後ろ指を指されたのだろう
私が帰って来たことに気付けば、異形を見るような蔑むような目をする

私をとり囲む環境は一変した

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