一般人になるまで
昼休みになった直後、後ろを振り返って佳奈に話しかける
「ねぇ佳奈、なんで私が夜は家に帰らないって知ってるの?」
これは、誰にも言ってないこと
秘密の一つ
親に嫌われてるからなんて言えるわけないのだから
「ん?由紀が大好きだから、じゃ、ダメかな?」
「え、どういう…」
「なんて、冗談!昨日、私だけ病院に残ったじゃん、帰り道のファミレスに由紀がいるのを見かけたの!」
なんだ、見られていたのか
てっきり私の中学時代のことが、噂やなんやらでバレたかとすら考えてしまったではないか
「声でもかけてくれれば良かったのに」
「だって、今さっきばいばいって言ったばかりなのに声かけづらいよ」
彼女は笑った
そこで拓人がやってきて、三人でお弁当を食べた
由紀も佳奈も手作りだったが、拓人だけは親に作って貰っていた
「俺、料理だけは壊滅的なんだよ~」
苦笑しながら言うが、本当はすごく自信ある
母がご飯を作ってくれないときは、自分で作るしかなかったから
「私は、早く起きるからついでにしてしまうだけよ」
本当は、親と会わないようにするために早起きしているし、母は自分の為に料理などしてくれない
こんな重たい事実を持っているとはお互いに思わず、いつも通りの風景が流れる