薔薇刺青
手早く着替え、いつものスーツに早変わり。
厨房に降りれば、やはり習慣は欠かせないのか、主がご自分で紅茶を淹れていらっしゃいました。
「いけませんよ、主がこんな所にいらっしゃっては」
「気にするな。
この家で俺に文句を付けようものなら即燃やすから」
「物騒なことを」
いつもだけれど。
まったく死に依存しているのはどっちだ。
呼吸するのと同じように人を殺す殺戮者のくせに。
人外じみたその趣向を持ち合わせながらなおも人間として生きる、死を忘れないながら死を選べない彼は賢者か。
その紅に満ちた哀れな人生を、彼は何十年何百年と、積み重ねては書き替えて、記憶という曖昧なものだけで生きている。
何度も、人間として生まれながら悪戯に転生を繰り返して、何にもなれず平行線を引く。
我が主は哀れな身の上である。
果たして私は、主の書物にどれだけ色濃く記録されているのか。
永遠を刻む、彼に。
生きる苦しみを知っているあなたは、私を生かしたことを無意味だったと言いますか。