薔薇刺青



寝床から抜け出して、直ぐにするといえば身支度を整える。


大きな姿見の前で、乱れた黒髪を後ろに追いやり着替えに邪魔にならない程度に一つにまとめた。



本当は邪魔だから切りたいが、長いのがいい、という主人の数少ない要望ゆえに聞かないわけにはいかなかった。



――…長い方が綺麗に見える、それに女だと解りやすいからそのままにしとけ。



綺麗に見える?


…は、あなたがそう褒めるだなんて明日は槍でも降るかと思った。



ああ、きっと私は綺麗に見せるために連れ歩かれているのだろう。



その辺の成り上がり貴族とそう変わらない物の価値観は、ひどく私の嫌悪を促した。



だから。




傷物になれば、潔く殺してくれるかと思っていた。



『無責任』と罵りたい。



兎に角あなたがやることなすことすべてを否定したくて、それは救われたこの命をぶち壊す他にないと思って。




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