薔薇刺青
なのに。
あなたはこの傷だけは消してくれなかった。
こんな醜い傷跡を見て、『綺麗についたじゃないか』と嘲笑って残させました。
この傷だけは消してほしい。
何故ならあなたが自ら剣で私の胸を切り裂いて付いた屈辱的な傷なのですから。
およそマーキングのつもりでしょうか。
これならまだ汚らしく口付けたキスマークの方がどれだけ良かったでしょう。
残る傷は疼きます。
あなたへの憎悪が、どちらも殺せない儘に流れていくあなたとの時間がいやに憎たらしく。
どうしてでしょうか。
どうして諦めて殺してくれないのでしょうか。
私を人形にしたのは無意味だったなと、嘲笑ってやりたいというのに。
こんな醜い生き物に大金をはたいたのは何故でしょう。
無意味で、無価値な女とは思えませんか。
何故そこまでして生かすのでしょうか。
どうして教えてはくれないのでしょう、存外あなたは狡猾な人だと気付いてしまったらどうすればいいですか。