大好きなアナタと、気になるアイツ【番外編更新中】
「代金は、気にしなくていい。」

由香里が考えていることなど彼にはすべてお見通しのようだ。

あからさまにほっとした表情を浮かべた由香里に彼は優しいまなざしを向けた。

「すまないな、連日いろいろと付き合わせることになって。」

先日の出来事から西園寺は由香里を呉服屋だけでなく茶道の稽古にも連れまわしていた。

どうやら週末のお茶会に由香里も参加をしなければならないらしい。

「いえ……驚いていますが必要なことですし。」

先日1人部屋に取り残されて泣きはらした事を考えれば、どんな事でも彼と同じ方向を向いて仕事に取り組める事は彼女にとって大切な時間であった。

彼女にとってはこれが西園寺との最後の仕事になるかもしれない。


社長と社員。


立場は今も変わらないが、社長室を出てしまえば由香里などでは彼は手の届く人物ではないのだ。

由香里はそっと隣に座る西園寺の横顔を見つめた。
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