大好きなアナタと、気になるアイツ【番外編更新中】
「ツヨシが婚約したと聞いて嬉しくて会いに来ました。」

男はニコニコとほほ笑みながら由香里の手を握って、離してくれない。

「こ、婚約?」

西園寺の方を見れば知らんふりを決め込んで、同行してきた夫人と話をしている。

「しゃ、社長?」

由香里の悲痛な声に西園寺が振りむいた。

「なんですか?由香里さん。」

フリを続けろと彼の眼が言っていた。

「いいえ……つ、剛さん。何でもないです。」

慌てて呼び方も変えてみた。

「………っ。」

なぜか、西園寺の顔が一瞬赤くなった。

「さあ、皆さんがお待ちですから行きましょう。」

西園寺が州知事夫妻を促す。

改めて由香里が彼を見たときには既に普段の表情に戻っていた。

見間違いかしら?

由香里は夫人の相手をしながら、州知事とともに前を歩く西園寺をじっと見つめていた。
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