大好きなアナタと、気になるアイツ【番外編更新中】
遅くなってしまったが一旦会社に戻ってきた剛は、彼を待ちかまえていた誠につかまった。

「ちょっと聞きたいんだけど……?」

「アメリカの件でしたら、明日にも終わらせますよ?」

てっきりその事かと思って誠の脇をすり抜けようとした剛は、珍しく腕を掴まれた。

「そんな事じゃなくて、由香里ちゃん。」

剛の体がビクッと震えた。

「さっきまで此処で、ずっと泣いていたんだけど。」

「なんで……?」

剛には心当たりが本当になかった。

「分からない? 君の言葉で泣いていたんだよ?」

問い詰めるような誠の眼差しが剛に突き刺さる。

此処を出るときに言った言葉は覚えている。

剛の思い付きだが、綾瀬がチームを立ち上げるのは時間の問題だ。

だからこそ、訳が分からなかった。

片思いの相手のチームに入れるのだ。

ずっと営業に戻りたいと言っていたではないか。

「志水はなんで泣いていたんですか?」

きっと誠の事だから理由を聞き出しているに違いなかった。

「それは西園寺が、考えないと……。」

剛を見つめる誠の顔が優しくほほ笑む。





………ああ、今日も眠れないかもしれない。

彼の中で彼女の存在はますます不可解なものになっていった。
< 170 / 245 >

この作品をシェア

pagetop