大好きなアナタと、気になるアイツ【番外編更新中】
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なぜか、そのまま二人は食事に来ていた。
レストランはどこもいっぱいで長蛇の列を作っているのを見た木崎が、当然のように別の場所に車で移動しようとしていた彼を、あわてて由香里が止めた。
そして今、二人はフードコートでうどんをすすっている。
「で、志水さんこそ旅行の予定でも?」
旅行代理店の店舗で会ったのだから至極当然の質問だった。
結局彼女はあの後、何もせずに木崎とともにお店を後にしてしまったのだから不思議に思うのも無理がない。
由香里は恥ずかしそうに事情を説明した。
「実は私、旅行代理店の社員でいつか自分で店をプロデュースしてみたいと思っているんです。」
木崎は黙ってお茶を飲んでいる。
「まだまだ、先の……もしかしたらそんなこと退職までに企画する機会がないかもしれないけどついつい参考までにって、ああやって目新しい店舗は見に行ってしまうんですよ。」
おかげで店舗に入った手前、必要ないのにツアーのパンフレットとか貰ってきちゃうんですけどね。と、由香里は照れ隠しにアハハに笑う。
「良いじゃないですか。」
木崎は穏やかな表情をした顔を由香里に向けた。
「俺も、どうしても仕事相手からは親父の息子だという眼で見られていて……いつか俺だから仕事をするって言わせてみたいと思っています。今すぐには無理でも、チャンスがあったら逃さないように準備しておくことは大切ですよ。」
そんな木崎の意外な発言に由香里は思わずじっと彼を見つめてしまった。