大好きなアナタと、気になるアイツ【番外編更新中】
会社に着くといつも通り鈴木本部長がいた。

先週のうちに営業部も若干配置が換わり今まで営業部のフロアにあった鈴木のデスクは社長室とドア1枚隔てて隣接したこの部屋に置かれている。

鈴木の前を通らないと社長室には入れない形だ。今までは社長秘書の綾部がこの部屋で待機していたのだが彼は隣の秘書室にデスクを移し、社長のスケジュール管理は継続するものの社内の秘書全体の管理を任されることになった。

そして、本日社長付となった由香里のデスクはなぜか社長室の中。

「鈴木本部長…、やっぱ社長室の中っておかしいと思うんですど。」

鈴木のデスクの横に来客用の椅子を持ってきて座りこんだ由香里は、買ってきたコーヒーを飲んでいる鈴木に話しかけた。

「流石に僕もね、そう言ったんだけど社長が『どうしても』って駄々をこねてね。」

「駄々って……社長と同室なんて私、身がもちません。」

思わず由香里はデスクに突っ伏してしまう。

あの社長が駄々をこねるって想像できない…。

まあそれはとりあえず鈴木の比喩だとしても、由香里のデスクの場所は社長の意向だということは間違いなさそうだ。

由香里はまだ主が出勤していない社長室のドアをじっと見つめた。

「まあ、そんなこと言わないで。もし社長に何かされたら何時でも相談してよ。アイツを苛めておくから。」

由香里の訴えをあっさり無視して鈴木はニコニコとほほ笑んでいる。

「そういう意味じゃないです……。」

「じゃあ、どういう意味なんだ?」

鈴木の能天気なアドバイスにガックリとうなだれた由香里の頭上で朝から不機嫌そうな低い声が降ってきた。


「しゃ、社長。」


西園寺が社長室のドアに寄りかかっていた。
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